そこからどんどん貨物線に沿って歩く。途中、いくつかのトマソン(#251〜256)を見つけながら、国道1号線を渡り、京阪を越える。それらはこれまでいく度も貨物線と交差して通っていたのに、逆にそれらと交差する立場が変わると、確かに別の世界を歩いているような気になる。と、同時に、知った場所でホッとするのも確かなのだった。 歩きだして1時間ちょい。昼飯を京橋でささっと食べようかと思っていたのに忘れてた。ちょど都島通りに沿って旭国道筋商店街に出た。見ると、持ち帰りのやきそばがむちゃ美味そうである。ちょうど1人分焼けておいてあったのでおばちゃんに注文すると、新しく鉄板に豚やイカを乗せて焼き始めたところ。ダイナミックに10玉ほどびゃーーっと焼き上げて、できあがったばかりの焼きそばを入れてくれた。しかも300円のふつうの方なのに盛りがすこぶるいい。横綱という店ね。 さて、その焼きそばをどこで食うか。まさかたこ焼きのように歩きながら、そばずるずるというわけにも行かない。2軒となりの肉屋で買ったコロッケはさっさと信号待ちの間に食ってやった。腹が減ってたのだよ。仕方がないので、ぽっつら歩いていると、貨物線沿いに適当な公園があった。そのベンチに腰かけて、男一人で喰らう焼きそばの味。むちゃ美味っ。が、気分はほとんどホームレスすれすれヨ。やぁ、この焼きそばは到底持ち帰りとは思えないほどの美味さだったのだ。美味い、美味いと思いながら食っていると、高校生くらいだろうか、男の子と女の子が二人で自転車で公園にやってきてブランコ。美しいねぇ。
腹もふくれて、さて出発とタバコに火をつけながら歩き始めると、 「火ぃやったらあるぞ。ライターやろか」 と、ホンモノのホームレスのおっさんに声をかけられた。 「まぁ、ちょっとここ座っていけや。酒、飲むか」 公園の縁の段になったところに蒲団を敷いて、そこで日なたぼっこの真っ最中。ホームレスというても、ナリはけっこう小ぎれいで、どこか野田知佑そっくりである。これもなんかおもろいだろうと、おっさんの横に座ってタバコを喫う。 「まぁ、こうなったんも自業自得やけどな。わし、泥棒やっとったんよ。前科十何犯。」 おっさんはちょっと酔うとるので、言葉が聞きづらい。 「ルパンみたいやないけどな」 「そしたら次郎吉かいな」 「わし、本多次郎と言いますねん。寒うてな。旭署に保護してくれと110番したって。タバコ1本もらえるかな」 おっさんの話は筋が通っているようでかなり支離滅裂だった。なんじゃかんじゃ言うとったが、書くのめんどくさいので省略。 「ほな、ぼちぼち行くわ」と立ち上がると、行ってくれなという目でじっと見てきよる。しゃあないので、握手でもしよかと手を出したら、ぎゅっと握り返してきて離そうとしない。
「わし、困ってんねん」
知るかい、そんなん言われたボクも困るわい。
さらに歩く。阪神高速の下を潜り、城北通りを渡り、突然、淀川の土堤に行き当たった。いままでの徘徊は、土地勘だけたよりにうろついてたが、今回はしっかり昭文社の1万の地図を買うてきてた。さっと目を通していて、きょうのゴールは淀川の土堤までと考えてた。土堤に上がると、貨物線に沿って木製の赤川仮橋という歩行者専用の橋が架かっていた。地図には書いてないのだ。ちょうど折りからも夕陽タイム。きょうの締めくくりは淀川の上から眺める夕陽なのだった。