2年近く前に、マンションの駐輪場あたりに一匹の猫がいついて、妙になついてきてた。どこかからの迷い猫だったのか、たぶんどこかの家で飼われてたのかもしれない。ああいう猫というのは警戒心が強くて、男のボクが近寄るとさっと逃げ出してしまう。さすがに猫狂いのBが近づくと反対によってきてごろごろ気持ちよさげに寝転がった。そして、勝手にシロロンと名前をつけた。シロロンというからには当然白猫で、うっすらと猫の額に茶トラの縞が残っていた。 あまりになついてきて、性格もおとなしく可愛かったので、家に連れて帰ってきた。シロロンは何日かうちの家にいたけれど、他のうちの猫どもとはほとんどなじむことができなくて、じっと窓から外をうかがっていた。かつて飼われていた家のことでも考えていたのかもしれない。 仕方がないので外に戻してやった。外に戻してやってからも、Bが帰ってくる時間をしっかり学習して、じっと待っていた。Bを見つけると、大きな声で鳴きながら近づいてきた。そしてボクを見つけても近づいてくるようになった。でも撫でてやろうとすると、ふっと身をひるがえしてすすっと後ずさりしたんだけど。 そんな日々が1年ほど続いたんだったかな。ときには姿を見せない日もあったけれど、また次の日はしっかり同じ場所でシロロンは待っていた。 そしてぱったりといなくなってしまった。元いた家を見つけたのかもしれないね、とBと話した。
1年、2年先のことなどわからない。考えられないから考えない、考えたくない。まして約束なんかできない。それでも1月、2月先のことくらいなら、この萎縮した脳でも考えていた。