というようにとりとめもなくラスト1ヶ月ですね。
まったく、きょうび、眉毛に唾をつけずに見られる恋愛映画なんてヒマラヤの雪男同様存在があやぶまれる。
1956年(昭和31年)、横浜市生まれ。慶応義塾大学仏文科入学後、パリ第四大学留学を経て慶應義塾大学大学院博士課程修了。中上健次・坂口安吾を扱う評論で執筆活動を開始。大学院修了後の1989年に、最初の小説「うちのお母んがお茶を飲む」を発表。つづけて「ドアを閉めるな」「スペインの城」を発表し、「背負い水」で第105回芥川賞受賞(1991)。
十時前に雨が降りはじめた。たいした雨ではない。降っているのかいないのかよくわからない程度のかすかな雨だ。でも目を凝らして見ると、たしかに雨が降っていることがわかる。世界には雨が降っている状況と、雨が降っていない状況があり、その状況にはどこかで境界線が引かれなくてはならないのだ。僕はしばらくのあいだ、縁側に腰を下ろして、そのどこかにあるはずの境界線をじっと睨んでいた。
そんなことを考えながら読んでいると、なかなか読み進まない。と、同時に作家ってのは大変だなぁと思う。日常的に感じたりしたことを膨らませて作品の中にとり込んでくるわけだから、そんなものはまめにメモでもしておかないと、さっさと忘却の彼方に追いやられてしまう。もっともそうして固定しようとすると「雨が降っている状況」なんてことばに変質してしまうんだろうな。そんな「雨が降っている状況」ということばにはとても違和感を感じてしまうのだった。