きっと寝てしまうだろうな、と思いながら、『博士の異常な愛情』を回して寝ころんだら、案の定、ほとんど瞬間的に寝入っていた。夢うつつの中で「行ってくるね」と出ていったような気がする。寝ているところまで日が差し込んで目が覚めた。汗が噴き出している。もぞもぞと起きていきなり本を全部抜き出して書棚を移動する。猫の毛が舞い上がる。汗にべたついた体に猫の毛が貼り付いて気持ち悪い。部屋に脱ぎっぱなしにしてあったシエラのポンチョを片づけようとすると猫のおしっこのにおいがする。風呂場にもっていって水で洗う。なま暑い体に流れ落ちてくる水がここちよい。ふっと洗剤もぶちこんでみたら、それまで水だけでは落ちなかった汚れがたちまち水を真っ黒にした。そのまま風呂場でシャワーを浴びようとTシャツを脱いだら、右の肩にくきっと一列、痕が赤く残っていた。
窓一面、夕陽が真っ赤になって六甲に沈んでいく。この同じ太陽が昇るのを二人で見ながら「ボクの残りのキスは全部やるよ」と言ったことが、頭の中で渦巻いた。急にベッドに投げ出してあった携帯からEyes On Meが流れてくる。「あんまり気持ちよさそうに寝てたので起こさないようにでて行ったの、ごめんね」とメール。