なんかさぁ、この一週間ほどの間にふっと考えたりしてたことと全然ちゃうことを書きだしてんだけど、それはそれでいいか。
ずっと以前に《洋子》(仮名)というネカマがいて、本人は女ことばで文章を書こうとしていて、だからネットに現れるときも《洋子》で通していた。その事情をみんな知ってるから、別にネカマってわけでないけど、とにかくネットの中では「なりきり」になってたわけ。何度かオフ会などで会ったことがあって、《洋子》という名前とは全く違う風帯で、男前ってわけでもなかったな。それがニューハーフみたいだったら、ひょっとしてふらふらと行ってしまったかもしれないけど、どっちかというと中上健治体型だから、想像つくでしょ。これには困った。ネットの中では、男だとわかっていても、彼の「なりきり」に調子合わせるように、女として接してやってたのだが、いざ面と向かったときに、あらためて他の名前で呼ぶわけにいかないで、《洋子さん》と呼ばないと、誰にしゃべってるのかわからない。もっともその《洋子さん》のほうもしゃべりことばまで女ことばで通してるわけでなくて、ふつうに男のしゃべりをする。これ、女ことば使われたら、新世界のきちゃないオカマのようで逃げ出してたな(笑) ところが、そのオフ会の中で閉じられた世界では、《洋子さん》でみんな了解して通用するんだけれど、そこに第三者が存在するようになると、これはちょっと。オフ会が大阪であって、次の日に、「どこ連れてってほしい」と聞いたら、新大阪スカイビルとのご要望。ああいうところは地元の人間だとわざわざ上がってみようということもないので、それもいい機会だとつきあった。それが間違い。時は夕陽タイム。ちゃんと数えてみました。一番上の展望台には24組の二人連れ。もちろんすべて男と女の組み合わせであります。そんなところに、ボクと中上健治体型の男の《洋子さん》。さすがにそんなところで、「なぁなぁ、洋子さん」などと口に出せませんでした。
大阪の天王寺はパリじゃん、なんて書いてるのを、古いスタジオボイスで見つけて、トイレでウンコしながらくっだんねぇ〜と思いながらも読んでいたんだけど、ふっと見たら、その一文を書いていたのはまだ『ミシン』でデビューするずっと以前の嶽本野ばらで、確かに『上方通信』だかのライターだったから、そういうのを書いていても不思議じゃない。『ミシン』や『鱗姫』ではきっちり騙されちゃって、はじめ女が書いたんだとばかり思っていたアフォです、嶽本野ばらっていうのは男だってわかると、途端につまらなくなって、底が浅いワ。あ、女が底が浅いというわけでなくて、嶽本野ばら自体の底が浅くて、《嶽本野ばら》っていうのが《嶽本野ばら》という記号にしかなってないんだよね。彼(女)の提示するものがぺらぺらの記号となって見えたところで、ジ・エンド。その意図があったかどうだか、わからんけれど、女のふりってのもしんどいワ。そう考えてみると、『斜陽』の大宰なんてのは天才だったんだなと思うのでありました。