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■2004/02/23 Mon■  出会ったときから好きだったのだと [長年日記]

 あ、また中上の『鳳仙花』ネタで、申し訳ない。って、謝る必要なんかなかったのだ。
 あのですね、もうかれこれ10年ほど前になるかな、中上健次に萌えてしまって、だだだっと読み漁って、それでも『地の果て 至上の時』 にはその重さに押し潰されてしまってた。やっとのことで『地の果て 至上の時』は数年前に読み通すことができたんだけど、そのごつごつした重さにへとへとよ。中上健次という、まさにヘビー級チャンピオンにサンドバッグにされたって。
 だから、どうしても中上健次ってのは、ごつごつした男気ぷんぷんの世界、10年前に新宮の神倉神社に行ったときに会ったおいちゃんの「にいやん」っていうドスのこもった声がイメージとして焼き付けられてた。
 中上健次もいっぱい読んでたようで、よく考えたら、そうそう読んでるわけでもなくて、この『鳳仙花』だって、長いことツン読状態。だいたい積んだら読んだことあるような気になってネ、いけません。
 この『鳳仙花』は『岬』、『枯木灘』、『地の果て 至上の時』 と続く秋幸三部作の傍系で、秋幸を私生児として生んだフサの半生を描く、言ってみれば中上健次版『女の一生』なんですねぇ。って、モーパッサンの『女の一生』も山本有三の『女の一生』も読んだことないんだけど。
 さて、まごぽんのほうに、けっこう長く引用してしまったので、ここではしないけれど、鳳仙花の赤い花弁で爪を染めるなんていう情景はね、ずしっとくるわけですよ。これはね、ごつごつした重苦しい男気の世界じゃなくて、色彩の豊かで細やかな女の情感だよね。ここで愕然というか、ヘビー級チャンピオンの中上健次の中でどうしてこんな女の情感を紡ぎだせるのか、これにはもう感心するばかり、なんてのもはるかに越えてしまってるな。まるで女が同居してるんじゃないかって、しかもあの体躯にだよ。なんで?なんでこういうふうに書けるの?って。
 そして『鳳仙花』の後半になると、かの浜村龍造が現れて、あ、やっぱり引用したろ。長いぞ(^_^ゞ
「フサさんを見たときから、俺も、色の白い手じゃねと思たんじゃ」
 男がそう言ったのではなくフサが眼にしたその川と森がフサの耳そばで物を言ったようで、男の熱い手がフサの手をつかみ、草の葉の手ざわりを確かめるように男の石のように硬い指が掌をこするのを感じる度に、呼吸がひとつずつ苦しく狭まってくる。
 あの龍造がフサを呼ぶのに「フサさん」とさん付けしてる。あ、これ何となくわかる。龍造にしたところで、女の前に出た男にしか過ぎなかったんだなと。それで、「川と森がフサの耳そばで物を言った」って、もうゾクゾクしてくるんだもんね。多分にボク自身女が入ってしまってるから、そのように耳そばで物を言われたら行ってしまうだろうなって、もうその時点で濡れてくる、って、えーっとこうしていま書いてるときにも前立腺あたりがむずむずしてきてる・そして「男の石のように硬い指が掌をこする」とね、たぶんいまもしボクが女だったら、その硬い指が濡れた柔らかい肉を分け入ってくるのを感じて、もうだめだめ...... 続いて
 フサの胸元をはだけにかかった男の手が服の上からあたる度に、硬くなった乳首を男に知られてしまうようで羞かしかったし、男の荒い息が耳にあたるのが苦しくて眼に涙さえあふれてしまうのだった。はだけられた胸に手がさしのべられ、乳房が男の熱い手の中にすっぽりつつまれるので息が出来ず、フサは抗いでもするように濃い息をたて、男の胸に救けてくれと言うように顔をよせて、坐ったままでいる事が出来ず崩れた。
 男がフサの体を支えて唇を吸いながら畳に横たえた。
 長い間、そんな硬い体に、よりどころない風に吹かれてしまうようなフサを押えつけてしっかりと力をこめて抱きとめてほしいと思っていたような気がし、なにもかも見せてやるというように素裸になった男を見つめた。男はその体そのものが業苦だというように「ほれ」と背中の刺青を見せ、昏い眼のままフサの体を抱き起こすようにしてのしかかる。
 男の体は火のように熱く、男の手がフサの足を起こし、フサの唇いっぱいに差し込まれる舌のように男が入って来ただけで体が急激にほてり、ちりちりと火を噴き出し、フサは男の背につめを立てた。息が詰まり、声をあげる事も出来ず、男が腹の筋肉をこすりつけるようにゆっくり動きはじめるのをやめてほしいと思いながら、体中が一気に裂けてしまう。男の背にたてたつめに力をこめた。
 男は力が抜けてしまったそのフサの顔を見て笑みを浮かべ、それからまた舌をフサに吸えというように唇をこすりつける。男が動く度にフサは声を荒げた。男の呼吸の音に誘われるように、フサの体の中にいまもう一人、男に合わせて身を動かしている柔らかい色の白い女が息づきはじめている気になりながら、男にきかせるように声をたてた。
 男は果てる事がないように体そのものが苦しいようにフサを愛撫した。
 長い事、素裸のまま抱き合っていたのは自分にもその男への恋慕があったからだと、男がまだ裸のまま板戸をあけて「食い物を持って来てくれ」と頼んでからフサは思った。十五の齢で勝一郎を知ってから、勝一郎以外の男を体に受け入れるとは思いもつかなかったので、刺青の背中に汗をかき素裸のままかまわず酒を飲みはじめた男を、出会ったときから好きだったのだと思い込んだ。
 行った?
 このあとも繁蔵と龍造の間で揺れる女の情感が描き出されていて、中上健次の重要なアイテムの夏芙蓉であったり、草のにおいであったり、その情景にからめとられて行くのだけど、それはまたいつか。
何だか、きょうは欲情させてやろうって、誰をだ?





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