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■2004/05/05 Wed■  迷いの窓 [長年日記]

おととい、京都へふらふらといつもの徘徊。
光悦寺はまだ高校生のときだから、もうかれこれ35年ほど前のこと、何で知ったんだろ。京都の北に閑静で、かの本阿弥光悦が庵からなる芸術村とでもいうべきコンミューンをつくっていたとか。当時の高校生って、ボクを含めて、マジメだったのです(笑) 休みとか、あるいはおデートなんかでも京都や奈良のお寺巡り。そいうや、亀井勝一楼の『古寺巡禮』なんて本もあったな。
つい最近、まごぽんに「蛇足ですが、ボクは、高校生のとき左大文字から金閣を眺めていた馬鹿者です。」と書いたんだけど、あれは光悦寺へ行ったときに、光悦寺の借景となっている鷹ヶ峯に登ってやろうとテクトコ歩いて上がった。鷹ヶ峯から尾根づたいに下って行ったら、10m幅ほどのはげ山になっていて、石を積み上げたトーチカのようなのが何基も並んでいて、あれ、なんやろ?と思うて、よく考えたら左大文字だったのね。その「大」の字の真ん中から下界を見ると、金閣が見えたんよ。そのころから猫も杓子も行くような観光地には通ぶって避けてたから、金閣はまともに拝んだことがなくて、それはいまだもってそうなんだけど、そんなとんでもないところから、タダで金閣を盗み見れたことにアホみたいな喜びを見いだしてた。まぁ、そのようなことを思い出しながら、光悦寺の中を見て歩いたというか、いわゆる「癒し」ですね。ぼおっと佇んでいる。ただそれだけの時間が流れるのが心地よいのでした。

光悦寺を出て、またぷらぷらと歩き始めたら、《血天井》などと書かれた立て札が目に入って、そのまま通り過ぎたんだけど、気になって引っ返してみた。血の天井、何かの血をベンガラ代わりにでもして塗り込めたのか? いや、怨念が籠もってんじゃないのか、なんて想像してみて、ふっと入ってみた。すると、本道脇の入り口の所に30足ほどの靴が脱がれていて、光悦寺なんかよりずっと商売繁盛しておる。と、言っても金閣、銀閣の比ではないけど。伏見城落城の際の血痕らしく、やっぱり怨念がらみか、どうもこの人気、とくに意外と若い子らが多いのは、ホラーだとか言って紹介されたんでしょ。その天井を眺めてみたけど、手形がついているというのもあんまり判然としないしねぇ、そういうホラーにはほとんど興味ないので、とりたてて一生懸命見ようとはしなかった。同じなら処刑した人間の血をベンガラ代わりに塗り込めたというほうがおどろおどろしくてよろしい。
それより、「迷いの窓」「悟りの窓」と称する、四角い窓と円い窓が並んでいて、その窓からお寺の庭が見えるほうが興味深かった。「血天井」を目当て(?)にやってきた人も、血天井にはほとんど目をやらず、その窓の前で記念写真。ピカッ! こりゃ、静かに瞑想しろ、瞑想。ほんまなみんながデジカメなんぞを持つようになって、またそのデジカメが《わたしにも写せます》的オートなもんだから、ところかまわずピカッ、ピカッてのは考えもんだわ。
ボクはね、迷いの窓に正対して、おのが煩悩への思いにはまってたのだよ。それでな、「悟りの窓」に向かうよりは「迷いの窓」に向かっている方が心落ち着くってのも、何かの因業なのか。悟りなどいらない。ずっとずっと迷いの中で生きていたいと。




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