《京都ホテルの窓から山鉾の巡行を眺めながらちょっとセンチメンタルになった。この部屋からの眺めは新婚旅行の時と同じ眺めだ。》
いまだ見ることのない山鉾巡行を京都ホテルのあの窓から眺めている自分を妄想し、アラーキー以上にセンチメンタルになる。ところで
それは当たり前のことだった。別れた男は罵る。おまえはうそつきだ、俺を騙してばかり、と罵る。そこでどう言い返してやろうと思ったけれど、そんなつまらないことで悩む暇があったら、わたしのようないい女にそんな口をきく男なんか無視しちゃって、甘く耳元で囁いてくれる男をさがそうと思った。わたしはいつだってそうしてきたんだから。バイバイ、それはあんたが言ったんだからね。わたしはあんたにとっては手に余る女だったのさ。だからそんな言葉でしか自分を保つことができないんだね。可哀想な男。わたしから言ってあげるよ、バイバイ。