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■2005/04/23 Sat■  臭わない写真 [長年日記]

もうおととい木曜のことですが、どうも最近は家にいてもほとんどまったくフリッカーに釘付けで、うらまごさえ更新が滞る始末。ましてや、こっちのまごまご日記となると、もう手が回りませぬ。まぁ、いいかってことで、いざ。

軟禁仕事。あ〜もったいない。とある女性から「もったいないね」とメッセで囁かれなくてもわかっとります。ほんまもったいない。この半ばフリーのような時間をもっと自分に取り込めないものかと、ただただ時間をスポイルされているならばです。が、いかんせん宮仕えの身、給料泥棒は女衒のようににやにやと笑っているしかないのでござんしょかねぇ。
とかなんとか言いながら、脱走、あ、いや、走ったわけでなく歩いて出たのでありますが、ぷらぷらとですね、歩いて、もちろん目的は写真するためなのですが、こっそりポケットにデジカメをしのばせて、歩いてみたはいいものの、どうも自分なりにテンションが低い。ローテンションではなかなかシャッターを押そうというきになれないのです。そこで無理にでも押してみたところで、元々これだという電磁波をキャッチしたわけじゃないから、あ〜つまらんのをまた写してしまったと自責の念にかられる。ほんま写真は難しいわ。
しゃあないので図書館に行ってはみたけれど、所詮人口10万程度のはずれ衛星都市の図書館にアラーキーやらはたまた蜷川実花の写真集があるわけもなく、かといって土門拳すらない。あ〜しゃあないなと、帰りかけたら図書館の下のホールで国際写真なんちゃらというのをやっていた。入場無料。
入ってみましたです。受付に偉いそうなおじちゃんが4,5人座っていて芳名帳などもあって、あ、この個人情報保護法の時代に、住所氏名を記して、さて写真を拝見しました。美しい!うまい!きれい!あ〜世の中にはうまい写真を撮る人がこんなにもいるのだ。ボクなんてなんとええ加減な写真ばっかり。写ったら儲けモンとそんなんばかり。
が、何かが違う。見ていてしんどいのだよ。並んでいる写真はどれもこれも美しく撮ろう、でや、うまいこと撮れたやろというばかりで、少なくともボクには、その向こうが伝わってこない、臭いを感じとれない。臭いですよ、臭い。匂いじゃなくてね。ま、偉そうなこと言っちゃって、また悩みの森に入ってしまいそう。


abstract on the wall


■2005/04/18 Mon■  櫻、散る、散る - ニコンおやじの輪姦大会 [長年日記]

 仕事がまともに始まって、ああもうイヤwってね、あ〜た、イヤでも仕事しないとごはん食えんでしょが。う〜んと休みってのがこれほどありがたいものだとはね、まさに有り難いなのですが、10日の日曜はってぇと、アホな天気予報が雨ダスってから、無為に過ごしてしまったじゃないの。それから6日間休みなしだって、ゆっくり写真も写せない。仕事の行き帰りに写すったって、行き帰りは無感動なことはなはだしい。仕事場で空いてる時間に写していても、キラいなものはどうしても写せない。キラいなものには自分がのって行かないんだよね。やっぱり好きなものを撮らないと。
 少し前に大和川染工所跡を写しに行ったときに、土堤に蛇が死んでひっくり返ってた。ボク、何がキラいと言って蛇ほど嫌いなものはない。そのときもぎょっと怯んでしまって、もっともすぐに死んでいるというのがわかったのだけれど、それでもどうしようか、その先に行きたいんだけれどと、死んで動かないとわかっていてもアカンのですわ。でも、その日はノリノリだったので、なんとか死んだ蛇の上をまたいでその向こうに行くことができて、カシャカシャとやって、再び蛇のところまで戻ってきたときに、バカだねぇ、ノリノリってのはほんとバカにしてしまう。写真家たるもの自分がイヤなものでも撮らないとダメなときがある、なんて思ってしまって、あんた、報道カメラマンじゃないんだからさ。やおら蛇を撮り始めた。しかもマクロにして蛇の死体に10cm近くまで近接だ。うげぇ〜、思いだしただけで吐きそうになってきた。
 さてそのようにして撮った蛇の写真、これはボクにとって生涯あるべきことではないので、そりゃもうお宝とったような気分で、家に戻って早速flickrにアップした。フォトショでレタッチしてるときも、モニタにでかでかと蛇の死骸が映し出されるわけじゃない。あゝ、もう、ちょっとトイレ行って吐いてきます(uso)。そんなふうに苦労して我慢してflickrにあっぷしたのはいいもんの、そのあとflickrにアクセスするたびに蛇が出てくる。嗚呼、もうそこまで。ガマンの限界。削除しました。ほんとキモいったらありゃしない。もちろんflickrだけじゃなく、マックのHDからも削除。完全に削除。こうして生涯最初で最後の蛇は0のデータで埋め尽くされたのであります。イヤなもの、キラいなものは間違っても写しちゃダメって。

 ところできのうは恒例の唐組の大阪公演で、例によって朝から整理券もらうのに並んで、さてそのあと、一旦家に戻ってというつもりだったのに、あまりの天気の良さ、それとこの10日間ほどほとんど撮れなかったフラストレーションで、大阪城公園をまずぶらぶら。ああ、もうあちこちでバーベキューだ-_-; 公園の林の中のホームレス小屋に隣接してのバーベキュー。公園の中はそんだなもんだから撮るものなんもなし。イヤなもん撮ってもしゃあないのね。
 で、ポクポク歩いていると、また出た、ニコンおやじ軍団。首から F4(確認済み)ぶらさげたおやじがいて、たいそうな三脚が立っていて、そしてモデルのおねえちゃん二人連れて、あねえちゃんの顔が異様に明るいと見ると、おねえちゃんの顔にレフ板の光が輝く。そしてそのおねえちゃんに群がるようにニコンおやじが5人、6人。大撮影会。好きにして。ニコンもったらそういうのしか撮れんのかい。ありゃ、レンズ通した輪姦大会にしか見えんがね。まぁ、ボクは散り果てた櫻でも撮ってきますわ。


sakura were scattered in the army graveyard


■2005/04/06 Wed■  MUSE meets the GOD of photography. [長年日記]

あらあら、あははと笑ってごまかせ。勝手に逃げろ、人生だなんてゴダールしてます。
えっとですね、神戸行ったの書いたの、2週間ちょい前でしょ。それから遊び呆けてたわけではなくて、ひたすら写真してたの。伊勢にも行ったし、伊勢から大阪通り越して琴平までなんてわけのわからんこともやってのけて、もう足が棒になるくらいまで歩きに歩いたさ。老人の散歩などというのは赤瀬川原平にまかせておけばいいのであって、あらら、赤瀬川なんて呼び捨てにしてしまってる、この散歩はアグレッシブですよ。きのうも京都へ行ったはいいものの、伏見稲荷から三条河原町まで歩いて、そこからさらに清水の舞台まで歩いてんだから、誰か褒めてやってください。
さてきのうのことですが、祇園ですね。祇園で舞妓さんが歩いてるのを撮りましたよ。ってのはウソ八百。そこらのぶっさいねーちゃんがだいたい白川あたりで舞妓さんの格好させてもらって、記念撮影やってるのを、横から一生懸命、携帯で写してるなんてことほどつまらないものはないと以前にもそれは書いたかな。ところがです、知ってましたか、祇園にも甲乙があって、白川あたりは乙ですね。一力の裏手あたりが甲部で一見さんでは上がれないと来たもんだ。ボクなんてどう転んだところで無理無理無理。その甲部で、まぁしゃらしゃらと写真撮ってる分には可愛いもんです。そこでね、角っこにええ年こいたおっさんカメラマンが3,4人、そろいもそろって肩からカメラバックさげて、首にはニコンでしょね、きっと、ニコンのF4とちゃうやろか。どうせ、その連中と来たらそれしか知らないから。それに200mmくらいのレンズつけて。こっちはもうすり切れたデジカメ右手に、ただしいちおう左のポケットにはコンタックスはしのばせてるんだけど、うりゃツァイスレンズじゃあってもんです。そのおっさんらから見ると、ボクがあんたら携帯のカメラで何写しまんねんと思うてんのと同じように思うとるんだろうな。ほっとけ。そのおっさんらの前を、アホか、こいつらと、見下しながら通り過ぎたら、10mも行かないところに西陽うをいっぱいに浴びた五辧の椿が。ほんまあのおっさんらこんあすごいもんがあるのに、どこに目えつけとんのじゃい。でや!
と、その後ろでおっさんらが急に色めきだったのだ。な、なんと、芸者のお姉さんが登場。な、なんと、このおっさんら、芸者のおねえさんの出待ちかい。確かに白川のにせ舞妓を一生懸命写すのとは格がちがいますわ。あ、格がちがうのは、その芸者のお姉さんと白川にせ舞妓か。一斉におっさんらの首からさがっていたニコンが芸者のおねえさんに向けられる。その光景たるや、情けないったらありゃしない。あのな、それほどまでしてお姉さん写したかったら、揚げなはれ。して、芸者のお姉さんたるや、これはもう堂々たるもんで、そのおっさんらのレンズにひるむこともなく、そこらの蝿が飛んでるのと同じなんでしょ、しゃらりしゃらりと、花見小路のほうに歩いて行く。その後ろをわらわらと追いかけて、なおも後ろからシャッター切るニコンおやじ。あまりの情けない光景を後ろから冷ややかに撮っているのはボク。そして一段落したところで、おっさんらの前を侮蔑のまなざしで通り過ぎたあと、前を行く赤いマフラーのギャルがかわいいじゃないのと歩きながら後ろから撮ってるのはデジカメおっさんのボクなのでした。

そのあと花見小路に出て一力の犬走りに落ちるお決まりの自分の影を撮って遊んで、ぷらぷらと歩く。次の角まで来たところ、なんとまた芸者のお姉さん(さっきのお姉さんとはちがう)が一人でボクのほうに向かって辻を歩いて来るじゃんか。そこにはニコンくそおやじもいない。瞬間的に正面から芸者お姉さんにカメラを構えてしまうボク。名誉のために言うておきますが、ボクは出待ちなどしとりませんですよ。あくまで偶然。こちらに向かってしゃなりしゃなりと歩いて来る。さすがプロの中のプロです。こんなこと風俗嬢にやってごらんよ。比べたらあきませんか。まったくボクのカメラなど意に介せず、しゃきと前を向いたまま近づいてくる。できる限りひっぱりましたよ。ここはね、ファインダーを通しての一対一の対決ですよ。そしてその勝負はっていうと、ボクの完敗。ニコンなら連続シャッターやっちゃってんでしょうね。そして露出とかばっちり測定済みなんでしょ。ボクなんて、わたしにも写せますに毛のはえたデジカメで、お姉さんに勝負挑んでんだから。あー、でもこの緊張感ってたまらんかったなぁ。はっきり言うときますとね、いい加減なボクはだいたいにおいてプログラムモードで撮っちゃってるもんだから、お姉さんの歩いてきた辻は日が陰っていて、F=4.8の1/30秒。そこにおねえさんはこちらに向かってくる。おまけにAFだ。そうでなくとも、反応の鈍いデジカメのAFだ。ちょっと落ち着いてれば、あらかじめ、そこと位置を決めて、ピントあわせとけばいいものを。だから完敗なんだって。あ、芸者おねえさんにね。ニコンくそおやじになんかどう転んだところで負けません。
ところがだ、ボクには写神がついている。芸者お姉さんはボクの立っていた角を曲がって花見小路の方に歩いて行く。はっと気がついて、後ろから一枚。そうボクは何も考えていない。芸者お姉さんはボクの前を通り過ぎた瞬間にミューズに変身していた。そして、出たっ、写神! どうしてそんなところにミューズを手招きするように立っているのだ。一力の赤壁にくっきりとはえる白い衣装で立っているのだ。
興奮してしまいまいた。いい写真を撮るためにいい写真機はいるのか。ノン! いい写真機でないと写真は撮れないと勘違いしてないか。いい写真だけを求めているんじゃないか。いい写真がほしいのならとにかく歩き回ること、写神を信じること、そうすればかならず自分の写真の中に写神は現れてきてくれる。そう信じてボクはまた歩く。
と、言いながら、またPowerShot A95 買ってしまいましたけどね。だってA70もすり切れてきたんだもん。それくらい使い込みましたよ。

五辧の椿 (a five-petaled tsubaki)



MUSE meets the GOD of photography.


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