炎が揺れていた。咲き萎れた幾重もの緋色の花弁は、風に揺れ、彼の眼には、炎に見えた。
なんて書き出しできたら、ついふらっと読んでしまうでしょ。これはきのうの日記に書いた中上の『楽土』。きのう書くときに手元になかったので、これはどうしても引用しておきたいと思った。きょうもまた一篇『化粧』を読む。
一生懸命になって、周囲を疲れさせるタイプの人間がいる。しばらく消えればいいのにと思うけど、かの人にとっては、それすら不安で、一生懸命になろうとするが、空回りしてしまってるのが、まさにカゴの中のハムスター状態。くるくるくる。そんな様子が見え見えなので、つらい。
あ、『化粧』とは全然関係ないところにとんでしまった。文庫の裏表紙に書かれている「敢えて挑戦する力業」の通りのごりごり加減が、いまの耄けたアタマに殴り込みをかけてくるような気分。 「後になって寝化粧、死化粧という言い方があるのを知ったのだが、」 これもこの『化粧』からずれるかもしれないが、「化粧」というのはほんとにエロチックだとつくづく思う。その意味で「化粧」を捨てた女とは寝る気がしない。