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■2004/12/10 Fri■  夢の残像 [長年日記]

 こないだから夢の話をあるところである人としていたら急に夢を見るようになった。夢を見るというより、たぶんそれまでも見ていたのだろうが、起きた瞬間にきれいさっぱり消え去ってしまって、夢を見ていたのさえまったくわかっていない。なんでも起きてから夢の記憶は数分で消えてしまうそうな。そこでちょっと意識してやったら、少しは夢の残像も残るようになった。

 いつものように露地をのぞいている。ひょっとすると、廃屋と廃屋のあいだの隙間だったかもしれない。その露地に雑多なごみに混じってひどく立派なライフルがあった。突然、女が後ろからそのライフルを取り上げて、空に向かってズキューンと一発。ライフルにしてはロケット砲のようだった。
 そのライフルをもってクルマに乗って場所が変わる。開けた峠のようなところにやってきて、道の真ん中にはボクが以前に乗っていた臙脂のランクルが止まっていて、誰も乗っていない。その向こうに小さな古墳のような土盛りがあって、その土盛りの少し上をめがけて、ライフルをぶっぱなすと、バラバラと土盛りの上にだけ雨が降り、その土盛りは崖崩れを起こしたように崩れた。
 マスコミでは発砲事件として扱われボクは逃亡者になった。が、その現場に面したところに庵があり、そこへ一人でやってくる。どうもそこの庵主がその土盛りの守人らしい。その守人に謝ろうとやってきたはずなのに、庵主はいない。階段を下りていくと、真っ黒の板の間に上半分が真っ白な障子が貼られた黒い板戸にしきられた空間が冷え冷えとしている。その板戸を開けるとその向こうにくしゃおじさん(どういうわけか、顔は川谷拓三に似ていた)がいた。その男が庵主らしい。が、自分がやったことを切り出せないでいると、板戸の隙間から新聞が差込まれて、その新聞の一面には別の事件(殺人事件だったような)とともに自分が指名手配になっている。しかも所番地まで明記されている。

 男が死んだ。その葬式。火葬場へ向かう車には40ほどの女が乗っている。顔はまったく思い出せないというか、顔は見ていないのに美人だ。その美人の女がくしゃくしゃになるまで泣いている。どうも死んだ男の妻らしい。男の歳は56歳。70過ぎてたのじゃないかといぶかしく感じるが、56というのも若すぎる死だと一緒に悲しんでやる。
 その葬式の弔いの、いったい何なのかわからない、蝋を塗ったような厚紙があって、爪でその蝋をこすっている。すると女が「やっぱり精液をかけたところは蝋の乗りも悪いよね」と話している。




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