さて、ふつふつと煮える鍋をはさんで、人妻(27歳)が、「まごちゃん注1、生年月日いつ?」と唐突に聞く。あ、あのねぇ、こうして二人で久美浜くんだりまでカニを食いに来る仲なんだから、しっかりボクの誕生日くらいチェックしとけよと思いながら 「8月17日」と答えると 「生年月日と言ってるだろ(ばぁたれ)」 そしてかしゃかしゃと携帯をいじって、ほどなく 「まごちゃんはねぇ、しつしゅく。部屋の意味の「しつ」にやどの、室宿」 そういう暦とか方位とかはボクのばあちゃんが好きで、「おまえはことしはしろくもくせだから気ぃつけな」と言うのに「同じ学年におるのはみなおんなじ運勢かい」と難癖つけて、ほとんど信じてなかった。西洋占星術は太陽の位置がによるのだが、この宿曜というのは月の位置によるという。
「室宿の人間はねぇ、《実行力と状況判断に優れた軍師の星だ。自分のことばかりに夢中で、他人を慮ることがないので、社交的なわりに親友は少ない。》注2」 「うっ、あ、あたってるやんか」 宿曜の相性があって、それを対人関係の傾向と対策として見ていくといいとか、人妻(27歳)は言う。 「ちなみにわたしはぼうしゅくで、乳房のぼうに宿な。室宿の男、ずっとさがしてたんよ。こんなとこにおったか、ふふふふ」
人妻(27歳)のたくみなMCに、疑心暗鬼だったボクもついつい納得させられてしまう。こうして蟹の鍋をふたりっきりでつついているのも、室宿と房宿だからこそなのか。ネットで検索かけて調べてしまったよ。 Pちゃんは女宿で、室宿と女宿は、うっ、そういうことだったのだ(;´Д`A ```