そして
海色月というのは五月の古名だが、さながらこの季節には、海はその青をつかの間の空に譲って、この音楽堂には、怒涛のような終曲が青一色にうねりあがり、絶え間なく落ちかかってくるように思われる。中井英夫 『白い夕映え』
2年近く前に、マンションの駐輪場あたりに一匹の猫がいついて、妙になついてきてた。どこかからの迷い猫だったのか、たぶんどこかの家で飼われてたのかもしれない。ああいう猫というのは警戒心が強くて、男のボクが近寄るとさっと逃げ出してしまう。さすがに猫狂いのBが近づくと反対によってきてごろごろ気持ちよさげに寝転がった。そして、勝手にシロロンと名前をつけた。シロロンというからには当然白猫で、うっすらと猫の額に茶トラの縞が残っていた。 あまりになついてきて、性格もおとなしく可愛かったので、家に連れて帰ってきた。シロロンは何日かうちの家にいたけれど、他のうちの猫どもとはほとんどなじむことができなくて、じっと窓から外をうかがっていた。かつて飼われていた家のことでも考えていたのかもしれない。 仕方がないので外に戻してやった。外に戻してやってからも、Bが帰ってくる時間をしっかり学習して、じっと待っていた。Bを見つけると、大きな声で鳴きながら近づいてきた。そしてボクを見つけても近づいてくるようになった。でも撫でてやろうとすると、ふっと身をひるがえしてすすっと後ずさりしたんだけど。 そんな日々が1年ほど続いたんだったかな。ときには姿を見せない日もあったけれど、また次の日はしっかり同じ場所でシロロンは待っていた。 そしてぱったりといなくなってしまった。元いた家を見つけたのかもしれないね、とBと話した。
1年、2年先のことなどわからない。考えられないから考えない、考えたくない。まして約束なんかできない。それでも1月、2月先のことくらいなら、この萎縮した脳でも考えていた。
《もともと大殺界なる言葉は東洋占術の本場である中国には存在しない言葉ですし、我が国でも昭和57年になって突然現れたものです。六星占術という新商品を売り出すためにあえて大袈裟な呼称を考え出したのだろうと思われます。》http://www.dreamfield-y.com/daisakkai/04.html